・それ自身は化学反応の前後で変化せず、反応を促進するはたらきをもつ物質を触媒といいます。
・生物の体内でつくられる触媒は生体触媒、
その他の触媒は無機触媒といいます。
・特に、触媒作用を持つタンパク質を酵素といいます。
◎酵素の性質
【基質特異性】
酵素が作用する物質を基質といい、酵素はそれぞれ作用する基質が決まっています。
これを酵素の基質特異性といいます。
ガッツリPoint!
酵素はそれぞれ作用する基質が決まっているので、促進できる反応もおのずと特定されます。
したがって、さまざまな反応の起こる原形質には多くの種類の酵素が存在します。
また、この後記しますが、異なる基質で阻害が起こるなど、ひとつ酵素が作用する基質は必ずしも1種類ではありません。
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【最適温度】 触媒と温度
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酵素は基本的に熱に対して不安定です。これは、酵素の本体がタンパク質であることに起因します。
したがって、温度が上がりすぎると変性(活性部位の立体構造が変化)してそのはたらきを失います。
酵素が最もよくはたらく温度を最適温度といいます。
最適温度は、30度〜40度であるものが多く、
体内の温度は反応に適した温度といえます。
左図に注目してください。無機触媒は温度が上がるほど反応速度も上昇します。
一方、酵素はある温度を境に急激に反応速度が低下します。ここで変性が起こっているのです。
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【最適pH】 酵素の最適pH
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酵素が受けるpHの影響は大きく、酵素が最もよくはたらくpHを最適pHといいます。
強酸性、強塩基性下では変性してしまいます。
ヒトの胃はpH2付近、腸はpH8付近に保たれています。左図に注目してください。
胃液に多く含まれるペプシンはpH2付近、腸液に多く含まれるトリプシンはpH8付近が最適pHです。
それぞれが適した場所で最もよくはたらけるようになっていますね。
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◎酵素の反応速度の変化
酵素の反応は、酵素や基質の濃度に比例します。
グラフを見ながら、その変化を見ていきましょう。
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さきほど述べたように、反応速度は酵素濃度や基質濃度に比例するため、酵素濃度が2倍になれば反応速度も2倍に、
基質濃度が高くなれば反応速度も上昇していますね。ところが、完全に比例しているなら右上がりの直線が続くはずなのに、
実際のグラフは上がった後に横ばいになっています。これは、酵素と基質がどれだけ結合しているかに関係しています。
ほぼ比例の関係のグラフになっているところは、酵素に対しての基質の割合が少ない状態です。
酵素がいっぱい入っているので、基質を入れてあげればすぐに酵素がそれを捕まえます。
だから、基質を入れればそれだけ反応速度が上がります。
次に、横ばいになっている箇所があります。ここは、基質に対しての酵素の割合が少ない状態です。
基質が多すぎて、酵素はいっぱいいっぱいです。常にすべての酵素が基質を捕まえなければいけないので、基質をどれだけ増やしても反応速度が上がりません。
満席のレストランに並んでる人が増えても、座席数は決まってるので、店内の忙しさは変わらない感じです。
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今度は、酵素濃度と反応速度の関係です。
十分な基質があれば、酵素を入れれば入れるほどたくさん結合するので、反応速度が上がっていくのは納得できると思います。
しかし、基質の量が十分でないと、酵素をたくさん入れたときに余る酵素がでてしまいます。
したがって、低基質濃度では比例関係になりません。
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続いて、時間と反応生成物量の関係です。
酵素と基質の結合がたくさん起これば生成物量が増えるので、時間とともにその量は増加します。
生成物量が一定になるのは、すべての酵素が消費されたからです。
酵素濃度が大きくなると、時間当たりの結合が増え、すべての酵素が消費されるまでの時間が短くなります。
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ガッツリPoint!
一番目と三番目のグラフでは、どちらも変化が一定になる範囲が存在します。グラフの形としては同じですが、反応速度に注目すると大きな違いがあります。
まず基質濃度と反応速度の関係のグラフです。ここで一定になるのはすべての酵素が気質と結合しているからです。酵素クンたちはフル稼働です。
つまり、ここにおける反応速度は最大なのです。
一方、時間と反応生成物量の関係のグラフについてです。ここで一定になるのは基質がすべて消費されたからです。酵素クンたちは失業状態です。
つまり、ここにおける反応速度はゼロなのです。
当たり前だけど意外と考えないことですのでちょっと注目してくださいね。
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◎酵素反応の仕組み
・酵素のはたらきによって進む反応を酵素反応といいます。
・酵素と基質が結合したものを酵素基質結合体といい、
酵素反応によって生成する物質を生成物といいます。
( 活性部位 )
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( 基質 )
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( 生成物 )
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( 酵素 ) | |
( 酵素基質複合体 ) | |
酵素の活性部位に基質が結合し、酵素基質結合体になります。
酵素の作用により、基質は生成物になります。この反応において酵素自体は変化しないため、生成物を離した酵素は再び基質と結合します。
◎活性化エネルギー
安定した物質を反応しやすい状態に近づけるには、それだけエネルギーを与えてあげなければいけません。
反応が起こる状態になるために必要なエネルギーを活性化エネルギーといいます。
この活性化エネルギー以上のエネルギーが加わると、化学反応が起きます。
酵素を加えると反応が促進されるのは、酵素が活性化エネルギーを下げるからです。
与えなければいけないエネルギーが小さくなるため、常温などの比較的エネルギーの少ない状態でも反応が起こりやすくなります。
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