きぃくんの 高校生物学講座
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 [ 補酵素と競争的阻害 ]

◎補酵素

 酵素がはたらくのに必要な補助因子という低分子の物質があります。 酵素の中には、タンパク質のみではたらけるものと、この補酵素との結合が必要なものとがあります。 補助因子は補酵素補欠分子団金属イオンに大分されます。
 補欠分子団や金属イオンは酵素と強く結合しますが、補酵素の結合は弱く、透析によって分離できます。
 必要な補酵素を持たない状態の酵素をアポ酵素。補酵素と結合した状態の酵素をホロ酵素といいます。

 ガッツリPoint!
 補酵素の例としてNADPニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)は覚えておきましょう。


<透析>
透析
ビーカー  セロハンセロハン

@発酵しない  補酵素 煮沸すると酵素タンパク質は熱変性し、そのはたらきを失います。 したがって、熱に強い補酵素のみが残ります。
A発酵しない アポ酵素 内液はアポ酵素のみ。高分子の酵素タンパク質はセロハンの中に残ります。
B発酵しない  補酵素 外液は補酵素のみ。低分子の補酵素はセロハンを通り抜け、外液に拡散します。
C発酵する ホロ酵素 アポ酵素と酵素を混ぜることで、ホロ酵素になります。
D発酵する ホロ酵素 アポ酵素と酵素を混ぜることで、ホロ酵素になります。

 ガッツリPoint!
 透析には半透膜であるセロハンを使います。セロハンにチマーゼを入れ透析すると、 低分子の補酵素はセロハンを通り抜け外液へ、高分子の酵素はセロハンを通れずに内液へ残るというわけです。


◎競争的阻害

 酵素の活性部位に、基質と立体構造がよく似た物質が阻害剤となって結合し、 基質との結合が阻害されることを競争(的)阻害といいます。

 競争的阻害として有名なコハク酸脱水素酵素について見ていきましょう。
コハク酸脱水素酵素 コハク酸 コハク酸脱水
 通常、コハク酸脱水素酵素は、コハク酸と結合し水素を外します。
マロン酸
 しかし、コハク酸と立体構造のよく似たマロン酸はコハク酸脱水素酵素に結合することができ、 このマロン酸が結合してしまうとコハク酸はコハク酸脱水素酵素に結合できなくなります。 つまり、コハク酸の結合が阻害されます。

 ガッツリPoint!
競争的阻害  競争的阻害がある場合とない場合の、反応速度と基質濃度との関係をグラフにすると左のようになります。 基質濃度は低いときは、阻害してくる相手の割合が高いので、競争的阻害により基質の結合が阻害されることが多くなります。 したがって、阻害なしの場合に比べて反応速度が上昇しにくくなります。 基質濃度が高いと、基質のほうが酵素に結合する確率が高くなるため、反応速度が阻害なしの場合に近づきます。


◎フィードバック

・酵素の中には、基質が結合する場所とは別に、物質が結合することで活性部位の立体構造に変化が起こる結合部位をもったものがあります。
・このような酵素をアロステリック酵素といい、 アロステリック酵素に結合することで変化を与える物質を効果物質、 この物質が結合する部分をアロステリック部位といいます。

   アロステリック酵素        アロステリック部位
アロステリック部位)      (効果物質

 一連の酵素反応により生成された物質が、その酵素反応系の最初、または途中の酵素に結合することにより、 酵素反応を促進・抑制し調節することをフィードバックといいます。

 フィードバックを簡単な図に表すと下のようになります。
酵素フィードバック  酵素反応によりできた最終産物が効果物質となり、酵素のアロステリック部位に結合し、酵素の立体構造を変化させます。 図では、酵素の立体構造が変化したことにより、基質が結合できなくなっています。 このように反応を抑制する方向に働くフィードバックを負のフィードバックといいます。
 ガッツリPoint!
  負のフィードバックは、ある反応が過度に進んでしまわないように、生成物を利用した仕組みで反応を抑制します。 反応が進めば生成物が増えるため負のフィードバックも活発になり、反応が抑制されます。 逆に、生成物がつくられなくなればフィードバックは停止し、また反応が始まります。 このフィードバックは、体内の反応のバランスを保つ上で重要な現象ですね。


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